四月/kajitsu
 
 
 あなたの体温が近づいてきた、と日を追うごとに思う。駅のプラットホームですれ違う人々も薄着になり、半袖のTシャツ姿も時たま見かける。不本意に外套を脱がされていく様は、虫なら脱皮、植物なら蕾が開いたり種子が芽吹くという誕生を、桜や椿の花弁とともに匂わせるが、裸へと、生まれる前に戻っていく気がする。

「平熱が36℃なら胎内は38℃ある」という医者の話を耳にした時、じゃあ、夏は生まれていない頃の、ひょっとすると受精卵のパーツや、さらに時を遡った頃の記憶なのかもしれない、と思った。

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 さくら色という言葉は、ピンク色や桃色よりも脈動があって個人的に好ましい。(桜が好きかどうか
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