月精/本田憲嵩
 
青年もまた樹木です          あるいは
月面に向けられたロケットとでもいうのでしょうか
まだ鮭のように勢いよく放つまえのそれを
湿気った寝具のなかで
もうすでに捧げています
その体幹の節々に日々の生活の営みが
まるで夕の陽だまりのように凝るとき
とくにその夜には 夜が濃密にひろがってゆく
陰嚢を膨らませた白い燃料の海は
その満ち足りた引力に強く引かれながら


月の桂から
映写機のように差し込む
青白い月影のなかに
肌が宿ります 黒髪が宿ります 微笑が宿ります そして溢れだす
さらさらと水のようにせせらぐ
澄んだ未生の声
胸からはシュレッダーにかけられたような
花束のひかりを抱えて
磁石のように方角を向いて
窓に宿る月と共に添い寝しています


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