昔話とその後/こたきひろし
 
むかし
私は反戦の詩ばかりを書いてました
他人の真似をして
だけど浅い心の底では
平和は水や空気と一緒でした

むかし
反戦詩人だった私も
今は救いようもなく歳を重ねてしまい
ただの、好色な爺になってしまいました
詩は人生のごみ溜めに沈めてやりました

むかし
私は努めて恋愛の詩を書いてました
だけど
女たちは皆私をよけていきました
他の男のたくましいけつの後をついて行きました
私の恋は人生のごみ溜めに
ぷかぷか浮いていただけでした

むかし
男は戦争でした
国家の手先になって
上官の命令に従い
捕まえた捕虜を銃剣で突きました

むかし男は兵隊でした
でも
いつかその時を待たずに
施設の寝台の上で安らかに植物になってしまい
そして
死んでしまいました

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