花咲く頃に/霜天
少しくらいは、思っていたことだけれど
手を繋いでしまうくらいの
やっぱりここは肌寒さで
夜明け間近に笑い出すやかんの
湯気を呑み込んで
一日を始めてみたりする
花咲く頃に、花咲きますと
誰かが繰り返し伝えているのを
右の耳から左の耳へと通過させながら
部屋の明かりを手繰り寄せるスイッチ
ぱちぱちと弾けた白い明かりは
繋いでいたものに
ほどいていくことを
遠くばかりが削られて
肩と肩とで寄り添うこともない
花咲く頃に寒くなる少しだけ
考えることばかりが
どうしようもなく一人になりたがりで
明けていく部屋が窓と一緒で
少しずつ湾曲していくものだから
霧に紛れ込まれて
途方にくれる白い部屋を
噴出すやかんが彷徨って
後はもう、笑うばかりの
吐く息の白いことを
もうどうしようもないのだと
誰かが慰めあうのも
もう少しのことだろうと
誰かが言います、花咲く頃と
遠く暮れるそちらの部屋の
あなたの触れるその場所を
花咲く頃に
花咲きますか
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