納骨の前夜。/
梓ゆい
木箱に入り
白い布に包まれた父の骨壺を抱きしめてみる。
次々と浮かぶ
共に過ごした楽しくも懐かしい日々。
一緒に眺めた江の島の海と
鼻先をくすぐる潮風の匂い。
真っ暗な部屋の中に
波の音が聞こえてくる。
ふいに現れた
季節外れのモンシロチョウ。
私の頭上を一周して
真新しい位牌に止まり羽を休めている。
それは父の化身だと信じたい。
我が家のぬくもりを懐かしみ
家族に会いに来た
父だということを。
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