別れの日。/
梓ゆい
49日の晩
家のあちらこちらで
父の気配がする。
(ぎしっ・・・・。ぎしっ・・・・。)と
鳴り響く階段と
広い縁側。
家中の壁を撫でまわし
目を細めながら歩き回る姿が
脳裏に浮かぶ。
顔を覗かれて
頭を撫でられたと錯覚を覚えた直後
(じゃりっ・・・・。じゃりっ・・・・。)と
音を立てた庭一面の石畳み。
黙って去り行く父は
きっと一人で泣くのだろう。
もうすぐ開く
母が植えた赤いチューリップ。
それを一本
手に取って。
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