詩人の罪/岡部淳太郎
 
である。
 いまこの時期に書いた詩を読み返して、思うことがある。書いていた当時もぼんやりと思っていたことだが、それは、詩人の罪ということである。
 人が死ぬ。その人の近くにたまたまひとりの詩人がいて、その人の死をテーマに詩を書く。人の不幸をきっかけに、一篇の詩が生まれる。皮肉なことではないだろうか? その昔、自然主義文学や私小説が盛んだった頃、小説家たちは自分の周囲の不幸や醜聞をネタに小説を書いた。それと同じようなことが、詩の周囲でも起こっている。人が死ぬ。それをテーマに詩を書く。新しい詩が書けたことに詩人はほくほくする。一丁挙がりである。人の不幸を元に書くという、詩人の罪。詩を書く者は、みな
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