詩人の罪/岡部淳太郎
 
ならまだ良いが、まったく書けず、アイディアも何も湧いてこなかった。ところが、妹が亡くなった途端に、僕の中に詩が降りてきた。妹を亡くした直後だけに、テーマは自ずと妹の死に絞られていた。僕は妹を亡くした空虚感をごまかすため、またはなだめるため、それらの着想に従って詩を書いた。妹の死にひきずられて書いたのではだめな詩になる。そう考えて、なるべく感情を抑えて、冷静に書こうとした。春から夏、そして秋にかけて、僕は妹の死だけをテーマに詩を書きつづけた。意識してそうしたわけではない。妹の死から離れて別のテーマで書こうとしても、妹の死が無理矢理に僕の書くものの中に押し入ってきた。その頃の僕は、どうあがいても妹の死
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