羽・廊下・絵本/石村
 
   羽


 とんぼが旗竿の先にとまつてゐる。

 セルロイドのやうな羽の一枚が、半分切れてゐる。

 緑の縞の入つた黒い胴を一定のリズムで上下させ、三枚半の羽を震はせながら、とんぼは虚空を睨みつけてゐるように見える。

 だれのうまれかはりなのだらう。


(二〇一八年十月十五日)



   廊下


廃校の廊下。どこまでも続いてゐて先が見えない。

三人立つてゐる。
一番手前にゐるのが、去年死んだ友だち。
その向かうにゐるのが、太つたお巡りさん。
一番向かうにゐるのが、わたし。

下校のチヤイムが鳴ると、お巡りさんが突然走り出した。
[次のページ]
戻る   Point(24)