美空の下に美空の果てに/こたきひろし
 
JR線の駅が近い。線路の上にかかる橋の上から通過していく電車の音を聞きながら歩いていた。

もしかしたら余命幾ばくもないかもしれない私の命。
人間の寿命なんて人それぞれに違いがあるけれど一世紀をながらえる人は奇跡だろう。

生き物として、ヒトとして死を何よりも怖れてはいる。だけど一世紀を生き長らえる幸運の種を持って私は生まれて来てはいないだろう。そんな奇跡にあやかりたくはない。

JR線の駅に向かっ歩いていた。線路の上にかかる橋を渡りきると真っ直ぐには行かずに左に折れた。その先に駅があるからだ。
早朝の空気が街に立ち込めていた。空はいちめん青一色に染まり、何だか心が切り裂かれてしま
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