夜と雨音/言狐
夜の闇はとろんとした、優しい液体のようだ。
それはスープを眺めている時の感情と似ている。
それは静かな湖をひとりで眺めている時の感情と似ている。
ただ、ぼくを包み込む。
その中にとっぷりと浸かって、ただただ揺蕩う。
雨の音は咀嚼音のようだ。
それは目の前のごちそうをひといきで平らげようとするのに似ている。
それは嫌いなものを無理やり食べてしまおうとするのに似ている。
飲み物と食べ物が揃えば、満たされて白い光がやってくる。ひとびとはそうやって何度も朝を迎えたのだ。
だから、ぼくはいつまでも空腹で、喉は乾いたまま。
ぼくは、ぼくのひかりを迎えられないまま、ただ白い光を眺めている。
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