ジャンケンを/こたきひろし
 
ジャンケンなんてしなくなっていた
それはすっかり大人だから
もう子供には戻れないから

ジャンケンなんてしなくなっていた
もう鬼ごっこはしないし
できないし
かくれんぼは
どこにも隠れる場所がなくなってしまったから

ジャンケンなんてしなくなっていた
ジャンケンなんてしなくても
一日は始まるし
一日は終わるから

その頃、僕は高校生だった。
あの日最後の授業が終わると担任の先生に呼ばれた。
お前帰りがけにみさよの家によってこれを渡していってくれ。
近所だろ、と言われて封書を渡された。なかみは手紙のようだった。
担任はまだ若くて結婚していなかった。
「何ですか
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