やさしい世界の終はり方/石村
よく晴れた十月の午前
山の上の一軒家にひとりで住んでゐる松倉さと子さんのところに
郵便局員がたずねてきた。
「ごめんください、お届けものです」
「あら、何でせう」
「どうぞ、これを。すぐに開いてください。たいせつなお知らせです」
「――まあ、おどろいた。世界が今日で終はるんですつて?」
「さうなんです。あと十九分です。遅くなつて申し訳ありません」
「いえいえそんな、こんな山の上ですもの。わざわざ知らせていただいただけで十分よ」
「なんとか間に合つてよかつたです。おかげさまで、これでぜんぶ配達できました」
「それで、あなたはどうするの?あと十九分しかないなんて。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(26)