さびしい花/塔野夏子
 
さびしい花が咲いている
そこは天国のはずれのような場所

そこに立ち
あらためて秋という季節をふりかえる
君の白い貌
硝子細工のまばたき

うす青くたなびく記憶――
を幻の鳥のように掠めていったひとつの気配を
名づけぬまま
君はしずかに微笑む

さびしい花が咲いている
そこは天国のはずれのような場所



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