渚にて/ホロウ・シカエルボク
リズムの残骸は、砂浜に沈んで、視覚障害者の見る幻覚みたいな朧げな輪郭だけが、晩夏の太陽のなかで揺らいでいた、それはジェファーソン・エアプレインの音楽を思い出させた、敢えて違うところで繋がれたパズルの、絵とも呼べない絵の、それでも何かを隠しているのかもしれないと思わせるような、成立している不整合―動いているようにも、止まっているようにも見える心臓、そんな揺らぎ、そんな印象…機銃掃射のあとのように荒れた砂のなかで、そこだけが卵を抱く魚のように存在を示していた、だけどそれは名前をつけるのならば墓標に違いなかった
台風に炙られた街に残った不快な湿度は、レイプされた女の表皮に残った暴力的な体液
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)