永き静けさ/木立 悟
左目の時間は遅くなり
右目は知らぬふりをする
雪になれない雨の日々
径に生える短いまぼろし
冷たい水のかたちたち
好きと同時に嫌いながら
指の数を限りなく
限りなく限りなく増しながら
遠い遠い感謝と返歌
爪 髪 皮 息
無いようで有る色の渦に
挿し入れられる那由他の音
海と陸地の残酷な取り決め
時間も生命も希望も裏切り
消えては現われ 現われては消え
何も無い風の世紀がただ横たわる
それでも
そうだとわかっていても
光はやわらかな網を編み
人は刻むことを止めない
こぼれ落ちるもの
昇りゆくものに
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