小さな小さなお話/仁与
 


「チョコレートコスモスが咲いて 」

コスモスが揺れている

ゆらり ゆらり ゆらり

ひとりの青年が
瞼を閉じたまま
石に腰掛けて

ぽたり ぽたり ぽたり

コスモスの葉が小刻みに
震えるよ

木々が彼の悲しみを隠す
ように唄う

ララ ララ ララララ ラ

風がそよぐ

そよ そよと

やがて日が落ち
喪色の夜が辺りをぬらす

星がキラリ キラリ輝いて
いうよ
さがさないで

星がキラキラ瞬き願うよ

明朝に
彼の記憶がなくなります
ようにと

キラリ キラリ キラキラと

再び 強い風が吹き
ゴォーゴォー ゴォーー
ゴォーー

乗せて乗せて彼の孤独を
乗せて 至極色の海原へ
押して押して落として

やがて白練色の
空が目覚め

聴こえてくるよ
やさしい朝の気配が

彼はまた瞼を閉じ
夜がおとずれるの希う


コスモスが揺れているよ
彼に寄り添うように

ゆらり ゆらり ゆらりと





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