「薔薇の下」/桐ヶ谷忍
薔薇の下に何が埋まっているのか
私は知っている
というより
私しか知らないものが埋まっている
ある霧雨の日
月のものの憂鬱と痛みを堪えていた時
そのあまりの無邪気な唄声を聴いているうちに
言葉にならない激しい怒りが沸き上がり
衝動的にその薔薇の下を掘り返そうとし
両手でほじくり掻き出し
汚泥が爪の間にぐちゃりと挟まったのを見て
私はその場にしゃがみこんでしまった
全ての指の爪の間に挟まれた泥
これが、私だ
私はこんなにもあの少女の時から遠ざかり
汚くなった
人はそれを成長と呼ぶだろう
けれど私には少女の唄声を聴くと
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