遠く 白く/木立 悟
 






ひとつ そこにある霧の本
まだら漕ぐ月
そして心
曇間の惑星 曇間の惑星 


冷たく痛みの無い針の雨
左目から喉へ斜めに入る
触れずにいると
熱く 消える


新しい紙が
冷たい火の冠が
空の辺を指し
砂岩の胸を聴く


生えるたびに新しい手足を愛で
生えるたびにその理由を忘れる
膝から踵へ
ずれつづける支点の星座たち


檻に散らばる大理石
壁に埋もれた
小さな銀の目
壁の向こうを見つめる目


明かりの点く一瞬前の
最も暗く冷たいものが
額から目に
額から目に流れ落ちる


掴むともなく何も無さを掴み
わからないまま書きはじめるとき
昼の鐘の音は遠く白く
白さのなかにひろがってゆく

















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