雨の町/オイタル
 
トから小銭を探して自販機に放り込むと
時折の雨
また強くなる雨
預言者たちは千の予言をポケットに隠し持つけれど
一人として自分の予言を覚えているものはない
箱庭の中で無数の雨風が生まれては消え
生まれては消えていく

 明日の昼までに
 晴れ上がる町の下絵は入稿されるだろう
 待ったのだから 
 雨は当分やまないのだから
 
 駅を歩いて帰り着く家の裏の
 うなだれるクヌギの木の枝に
 小さな青いリンゴを吊るして 点して
 その実をずぶ濡れの風に震わして
 そして私の体の中の
 この どうしようもなく下へと引かれるもの
 白く細かな 凹凸のあるものを
 燃え盛る雨に晒して

口数を減らし
雨の飛沫に消えていく鴉
駅が立ち止まる
信号が立ち止まる

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