雨の町/オイタル
トから小銭を探して自販機に放り込むと
時折の雨
また強くなる雨
預言者たちは千の予言をポケットに隠し持つけれど
一人として自分の予言を覚えているものはない
箱庭の中で無数の雨風が生まれては消え
生まれては消えていく
明日の昼までに
晴れ上がる町の下絵は入稿されるだろう
待ったのだから
雨は当分やまないのだから
駅を歩いて帰り着く家の裏の
うなだれるクヌギの木の枝に
小さな青いリンゴを吊るして 点して
その実をずぶ濡れの風に震わして
そして私の体の中の
この どうしようもなく下へと引かれるもの
白く細かな 凹凸のあるものを
燃え盛る雨に晒して
口数を減らし
雨の飛沫に消えていく鴉
駅が立ち止まる
信号が立ち止まる
戻る 編 削 Point(3)