雨の町/オイタル
 
信号を抜けると駅が小さな口を開け
その口の中にざぶざぶと雨が流れる
その口の中をしきりと鴉が覗き込み
鴉が入っては抜け 入っては抜けして
鋭利な風が立つ

風の中
おんなが頭を垂れて
ゆがんだ地面の地図をなぞり
おとこは両腕を組んで
売店の緩い看板に近づく
遠方の空は黒い顔をかしげて喉を鳴らし
ショウブの陰で猫が
いつとも知れぬ雨やみを待つ
戸板一枚のラーメン屋の軒下を行くのが鴉
急勾配のトタンの屋根の軒先を打つのは雨
雨と鴉
風と信号

信号を抜けて駅に立つ
駅で雨空をうかがう白塗りの預言者たち
 明日の空を予言し
 靴底の疲弊を予言する
ポケットか
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