ネコと逃げる/ペペロ
 
いく。
誰かには見られているだろう。
地上に降りて最初に出くわした乗り物に乗らなければならない。
雪の駐車場に着地して、あたりを見回す。
流れは変えられたのか。そればかりが気になる。

駐車場に入ってきたクルマを奪った。雪で道は混んでいた。渋滞だ。
たぶん七人の敵を殺った。あと一人がすこし自信がないが追っ手は今のところいない。
後部座席からネコの鳴き声がした。
カーテンの隙間から見つめていたネコに似ている。白黒だ。
ここで車を乗り捨てるのは危険だ。パトカーの音もしない。黒塗りの車も見当たらない。
このまま港まで行けば逃げられる。しばらくは、この国には戻れない。
と、車の屋根が急激に凹んだ。フロントガラスが真っ白になった。
ああ、やっぱり、ネコか。
ぼくは後部座席を振り返った。ネコが五匹にふえていた。
そのうちの一匹を抱えて後部座席の左側のドアから飛び出した。
工事現場のH鋼が落ちてきていた。
故意か偶然かには興味がない。
この流れごと、ぼくには走るしかなかった。ネコは従順で温かかった。






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