水精とは/本田憲嵩
 
生活には潤いが必要だったことについて
少しばかり語りたい
たとえば
星星や月に照らされて浅い川面に映える
逆さまになった細ながい樹木のような体幹も
おだやかな夜風に棚引くその黒々とした頭髪の枝葉も
すべては
昇る太陽と共に起床し 沈みゆく太陽と共に家路を目指す
規則正しい時計の針のような生活の中 寝台という名の透明な水の層に揺蕩って
性的な夢の波間からふいに漏れ出した 他愛もない
夢精のような謔言に過ぎなかったのさ
或いはそれはほとんど無限に近い精液の海から精製された
もう一人のボクでありながら
決してボクじゃないボク/もしかするともう一人のワタシ?
そうしていつも夜
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