猫とバラ/そらの珊瑚
 
赤い線が
皮膚の上に浮かび上がる
今朝
バラのとげが作った傷が


わたしのからだの中の
赤いこびとたちが
あたふたと
いっせいに傷をめざして
走っていることだろう

猫を飼っていたころもまた
そんな傷をこしらえては
夜、風呂の中で
しみて痛かったけれど
もうあとかたもない
あの傷も
あの猫も
薄いくもり硝子をふるわせていった
あの風も
明日の宿題も

決して致命傷にはならない
消えていくだけの傷だから
わたしの日々は
安心して
やさしいものたちに傷つけられている


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