欲望/こたきひろし
 
いちめん垂れ籠めていたのは暗雲

学校が退けた
放課後の教室から誰も居なくなった
職員室から人の気配がなくなった

校舎の中は否応なしに暗くなってしまった
図書室の本棚から一冊が床に落ちても
誰も気づけない

窓がわずかに開いていたせいで
暗雲垂れ籠めた空の彼方から風が入ってくる
何ひとつ断りもなく
硝子が鳴く何の拘りもなく

辺りはひっそりと静まりかえる必要があった
床に落ちた文庫本の頁が風に捲れて
何の因果か、芥川龍之介が現れた
教科書に載っている写真のまんまだった
きっと漠然とした不安は増すばかりだったんだろう

彼は椅子に座り暫くの間はぼんやりと考
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