金平糖草と野うさぎ/愛心
昔々ある山の麓に、綺麗な水を湛えた大きな湖がありました。
水際には雪のように真っ白な小さな花が咲き乱れ、いつも、きらきらと揺れながら、囁くように唄っていました。
いまは昼。 のちに夜。
水面が揺れる。 風に揺れる。
わたしは踊る。 吹かれて踊る。
空に月。 わたしは星
その声のなんと愛らしく、美しいこと。
ガラスの鈴と銀の鈴を、ビロードの上で優しく転がしているようでした。
山に棲む生き物達も、素敵な花の唄に、草を食むことや狩りすら忘れ、その場で耳を立てて、聞き入るのでした。
ある、満月の晩でした。
月明かりに照らされた小さな花は、夜空を煌めく星のようでした。
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