婚約/葉leaf
 
僕らは対の鏡のように、互いを跳ね返し合うことで一層互いの奥深くへと潜っていった。僕らは羽ばたき疲れた鳥のように、いま契約の形となって寄り添っている。僕と君とが一つの精神であることの証明に、僕らの父祖たちは次々と同意の拍手を送った。社会がいま社会であることに破綻した、僕ら二人の共同体が唯一の正しい社会であったために。

僕と君は離れていても互いを血液のように満たしていて、投げ合う思索は鋭利に互いの本質を削り出していく。僕らは巨大な柱として、いま天と地とをつなぎ世界を秩序付けている。ここからすべての言語が生まれ、すべての文化が競争を始める、まさにそのすべての始まりとしての僕ら。そしてすべてが流れ込み新たな混沌となる終末としての僕ら。

捧げるという行為そのものを君に捧げよう。君はもうとっくに応えている、君は君自身を僕に捧げてしまっている。僕は君の祭壇で、君は僕の祭壇だ。婚約、この契約に文字はいらない。必要なのは空と海と大地とともに交わした歳月であり、夜の闇の呼吸とともに過ごした瞬間である。いま、生まれていく皮膚の内側に、契約の肉が宿り始めた。

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