キリストとフクロウ/ホロウ・シカエルボク
もかもが光を弾く早い朝だった。しゃがみこんだ俺の目の前には磔にされ、打ち付けられた手のひらと足の甲と。唇から血を流しながらうっすらと微笑んでいるキリストが立っていた。俺の手によって生まれた神を眺めながら、俺は馬鹿みたいににやにやしていた。「天にまします我らの神よ」俺はそう呟いた。でも続きを知らなかった。どこかで鈍重な羽ばたきの音が聞こえて、一羽のフクロウがやってきた。キリストの顔と同じくらいの大きさだった。そいつはキリストの肩に止まり、まずまずだというように首を左右に回した。「朝だぜ」俺はそいつに話しかけた。「なにやってんだよ」信じてもらえるかどうか判らないが、そいつは嘴を左右に広げてにんまりと笑った。それで俺は話すことを諦めた。
キリストとフクロウがそうして俺を見下ろしていた。俺は自分のしたことに満足していた。もっとなにか、自分に出来ることがあるような気がした。けれどもう指先すら動かすことは出来なかった。
【了】
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