夜と姫/木立 悟
 





鏡に飛び散る
灯りの欠片
黒の駒 黒の盤
目から胸から
誘われる水


想い出したように
音は湧き上がり
忘れたいかたちに
曇は泣きはじめ


うたも光も
ひとつ巨きく ひび割れたまま
午後の海を午後に照らし
足りない羽を風から奪う


暗がりに転がる
蝸牛の拍手
足の爪を切り 夜に放る
光を持たぬものもまた
豊かであれ


たどり着けずに
無い地図を見る
過去を見ても 過去が見えない
水を追い 水を追い 原に会う


姫 背を向けた花
草の波 尽きる羽
鏡の奥から
振り返る姫


居ても居なくてもつづ
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