市営公園の駐車場に/こたきひろし
 
浴びるだけにとどまらずに泳ぎ始めた。
同じ時間に彼の最愛の妻は産院にいて陣痛にたえていた。
初ての出産だった。いつ産まれるか分からなかった。
彼は、
病院の下でなぜか頭をかかえて待ち続けていた。その内に看護婦が近づいてきた。
「ご主人、まだまだ産まれそうにないですからいったんお家に帰っていただけませんか。何かあったら携帯にお電話差し上げますから」
それを言われて彼は何となくほっとした。
正直この状況から、逃げ出したい心境にあったからだ。

しかし誰も待たないアパートの部屋に帰る気にはどうしてもなれなかったから、彼は途中で公園の駐車場に車を停めてしまったのだ。

病院にからは
まだ何の連絡もないのだから産まれてはいないだろう。
彼は運転席から降りて夢遊病者みたいに公園の中に歩いて行った。
まだ産まれてない我が子が胎児のままで池に泳いでいる。
もし溺れ死んだらと不安になってしまったからだ。

いつの間にか
父親として
父親になろうとして

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