透明なナメクジと金の飾りに、骸骨のお姫さま/田中修子
 
色の衣になって、若者の腕のなかにフワリとおりてきました。その天衣の中からは元気なあかんぼうの声がして、そのときばかりは若者の目にすこしひかるものがありました。
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 骸骨のお姫さまは、身軽になって浮いてゆきました。そうして若者が待つ浜へと、打ち上げられたのです。
 
 骸骨のお姫さまは、肉も内臓も取り戻すこともなく、金の飾りもなく、いまはただの骸骨の女の子です。いいのです、そんな骸骨の女の子を、若者が好いてくれるのですから。そうして誤解をといて漁師の町に住み、米のとぎ汁やもらい乳で赤ちゃんを育てながら、若者とひっそりと暮らしています。カランコロンと優しく笑い響く骨の声が聞こえてきます。
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? 領主と奥方もまた、それなりにしあわせに過ごしています。ふたりともふと風に乗っては聞こえてくる骨の音に耳を澄まし、ふっと視線をさまよわせるのでした。?
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