「祈りの残骸」/桐ヶ谷忍
 
雑木林の奥の崖まで行く癖がある
そんな時に偶然見つけたのがこの教会だった
天井近くには鳥の巣まであるほど廃れていて
キリストは取り外されたのか
薄汚れた大きな十字架があるだけだった

軋む長椅子にぼんやり座っていると
ここには、息苦しいくらい密度の濃い
叶わなかった祈りが充満しているのを感じる
かつてこの場で救いを求めた人々の想いで
窒息しそうなのに
それがやけに心地良い
私にも、なにかにすがってでも
叶えたくて、叶えられなかった願いがある
かつてここを訪れた人々も
そうした願いを抱えてやって来たのだろう

全ての祈りの根底には
かなしみがある

だからここ
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