溺レル/伊藤 大樹
 
青い羊水に染められて
沢山の私が浮上する夜

湖上の舟でまどろむ
かなしみで縫われたカレンダーをめくる

知らないでいることが
おろかなのだと知らずに
罵倒のメールを
憎んでも
憎みきれず
手放すことなどできなかった

水平線に
地平線がほどけて

羊水に溺れてもがく
自分を見た
 (水泳の成績は
  いつだってビリだった)

私を
殺すという
つよいけついに満ちたせいで

私は
私であることを
一時 免れる
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