詩を書くなんて/こたきひろし
詩を書くなんて
意味のない降るまい
かもしれない
少年時代に隠れて詩を書き出した自分は
暗い心だった
ノートにあるいは教科書の白紙のページに
言葉をまるで虫のようにいちめん這わせたのだから
その詩は負の暗号
誰にも解かれたくなかったが
誰かに読んで欲しかった
例えば初恋のあの人に
彼女の靴箱に
そっと差し込んでしまいたかった
しかし
それはついに果たせなかった
彼女は十三
私は同い年
初恋のあの人には一編も詩など必要ないに違いなかった
快活で明るかったのだ
その明るさは暗い心には眩しくて
目を向けられない筈なのに
男が女に心奪われる不思議
詩を書くなんて意味のない降るまいなのか
初恋のあの人に詩を読んで貰いたかった
彼女の靴箱にそっと忍ばせたかった
思いは空回り
体は夢想した
少年の時代
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