空から/こたきひろし
 
わりになった。
男は答えた。
それは怖い夢を見たわね。現実にならなければ良いけど。
女が不吉な言葉を口にした。
冗談よ。
言って直ぐに取り消した。私たち幸せの絶頂にいるんだからそんな事起こるわけないわよ。
何だか答えになってないような答えだった。
それから言葉ではなく、女は男の体をしがみつくように抱いてきた。男の口を探り当て唇で塞いできた。

男は空から真っ逆さまに落ちて来る夢から、一気に空へと昇っていく快感に襲われた。
真冬の一夜。


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