跳ねるさかな/田中修子
 
母の指し示す天に向かって飛ぼうとし
溶けて地上にたたきつけられた
ロウでできた羽に
また火を灯し夏の夜に置いて
風景を点と点とで浮かび上がらせようじゃないか
どこまでも どこまでも
飛びたって浮きたって
まなうら火花

海水のまとわりついたからだを真っ暗な冷たいシャワーで洗い流す
友人のしなやかな冷えた魚の肢体がすこし見える
まっ黒な夜に浮かぶ月 夏でも寒いこの浜辺にお別れをいう

頭のなかに言葉が滴り その雨音に耳を澄まして

日常の隙間に ちいさな手と洗剤にあれた大きな手と
つないでお昼寝をしながら
ああ、言葉が尾ひれとなって
どこにでも泳いでゆけた
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