跳ねるさかな/田中修子
 
青灰色に垂れ込める空や 翡翠色のうねる海や 色とりどりの砂の浜を
灰色の塩漬けの流木や 鳥についばまれてからっぽになった蟹や
ボラが跳ねる 「あの魚は身がやわらかくてまずいんだよ」
きん色に太陽が落ちて水平線に溶けてゆき
真っ黒く陽が落ちれば 向こうのなだらかな山に
青色の人の家の明かりや
きらめくオレンジ色の発電所が
光り

月が出た

血のにじむ世を照らす

キーボードにぱたぱた跳ねて
風景をえがきだすわたしのこの指

近所のスーパーとこのアパートとの往復
公園への散歩
病院へいくこと
ほんのときたま旅をする
ありふれて穏やかな日日のなかで

父母の
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