蝉旦那/ゆるこ
 
握していない

仕事に追われて、訳の分からない仕事時間に残業、
この猛暑の中自転車を走らせ、ふらふらと帰ってきては眠り、また早朝や真夜中に薄いシャツを羽織り出て行く

その姿はまるでこの蝉のようで、

私はマンションの下の土をちらりと眺めてしまった

浅黒く
大きな土の山がそこに横たわり、
中では白い何かがうぞうぞと蠢いていた

私の横にいた子供たちはミンっ、とひと泣きし
薄黒い羽を広げてその山に向かった

私が旦那を見失って一週間
彼はそこにいたのだろうか
それとも今、羽化するのだろうか
蠢く白い何かは息衝きはするものの
果たしてちゃんと飛べるのか
私にはあの三羽の蝉を見守るようなことしか
未だに出来ないでいる
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