アントニムな気持ち/ただのみきや
 
紙に描いた仮定の人物の横顔
その輪郭線は自分の顔だと主張して
パズルのようにピッタリ向かい合う
二つの概念
対義ゆえに二人ひとりの正面画のよう
口付けを交わし続ける恋人たちのよう
その愛は 憎しみと羨望
互いに相手なしでは価値が朧になる

創作は魂の再構築
詩文の中に編み直すことで
魂は瓦解して往く
未完成のまま終わってしまう
全てが作品へと生まれ変わる前に
ガウディは希
残そうとしても残らないのが常
塵から塵 無から無へ

理想を捨てて現実を選ぶか
現実を殺してまで理想に生きるか
理想と現実は地続きに見えて
夕陽のように決して追いつけない
だが理想を想い描くことこそが糧
現実を生きる者にとっては
砂漠で一輪の花を見つける奇跡
花一輪じゃどうにもならない世界でも




             《アントニムな気持ち:2018年7月21日》








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