雨とモスキートコイル/MOJO
ゃないか?」
ナンパな野郎どもだが、こいつらは、まあいい。それなりに弾くし歌う。問題は保坂である。あいつは長髪と甘いマスクで、見てくれはバリバリのミュージシャンだが、ドラムの腕はからきしであった。当時は、貸しスタジオなど、荻窪の新星堂にしかなく、レンタル代も高価で、高校生の小遣いでは、滅多に使うことはできなかったのである。ドラムの練習などする場所がなく、下手糞なのは仕方がないともいえたが、ドラムセットを持っている、というだけで、保坂はモスキートコイルのメンバーになったのである。
会場が十時四十五分、開演は十一時で、持ち時間は三十分。演目はジョン・レノンの『ニューヨークシティ』から始まっ
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