雨とモスキートコイル/MOJO
坂が逃げる。おれは、そこで気が付いた。あれは保坂ではないと。
だって、あいつは黒い学生服を着ていたから。
おれの学校の制服は紺色だったのだから。
学園祭が、おれたちのデビューだった。ギター二本に、ベースとドラム。四人編成のバンドで、モスキートコイル、と名乗っていた。今日がその晴れ舞台の日なのだが、あいにくの雨。おれは、他の学校の奴の尻を弄り、何か縁起が良くない気がしていた。
学校に着いて、貸しきりになっている教室に入る。前日にセッティング済みの楽器やアンプ類を再チェックしていると、ギターの多田と野田が入ってきた。
「近所の女子高から何人くらい見に来るかな」
「十人は堅いんじゃな
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