大きくはない、手で/霜天
広い、窓のあった部屋
私の一部分がそこで途切れていて
確かな
薄い胸で必死に空気を集めていたこと
息切れと
ほんの少し気持ち良いと思える
ぴりぴりとした痺れとで
滑り込んできた電車は目眩を起こして
うずくまっている
あの広い窓のあった部屋で
少しを信じるということ
探してみるとすれば
大きくはない手で
繋ぎあったこと
遥かな街が消えます
今この時も空になって
少しずつ波で、削られる私たちは
世界が揺れていることには気付かない振りで
零れた足跡に
自分の絵を書いて
ここが私だよ、と
気付かれない声で
気付かれない部屋で
並んだ
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