ウイルス・スキャン/為平 澪
毎日をスキャンして安心したい
(私は安全だ、と
毎日を表示して教えてほしい
(ウイルスはいませんでした、と
毎日を毎日フルスキャンして 私は木端微塵に疲れていく
(駆除したいのか、駆除されたいのか
デイスプレイに映る 私の小心者が
私を乗っ取り、私に成りすまし、私に取り付き
私のデーターを引き出し、私を裸の王様に仕立て上げる
ウイルスは駆除、ウイルスは排斥、
そんな口論で日は暮れて 誰に何が守れただろう
「悪いことをする人は どこか淋しい目をしているね」って
言葉を思い返すと ウイルスがまた一つ
胸のあたりから侵入してくる
モニターをうろつく小さな
「つながりたい」が悪意を持って涙するが
押しかけられても守ってやることはできない
私はただ私の手で真夜中を行き惑う
画面に引っかかった私の意気地なしを拾い集めると
何食わぬ顔をして
自分自身を シュレッダーに投げ入れる
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