手洟を?む/はだいろ
 
と気付かされるだけである。


そして、50歳も近くになってみると、
まるで、出世などしたいともしたくないともどうでもよく思っていたし、
実際どうでもよいはずなのに、
なんだか会社の扱いがとても冷たいことに思い当たってしまうと、
つくづく、
一般的な価値観の疫病のような染みが心に巣喰ってしまう。


とぼとぼと歩く。
住宅街の中に墓地があり、よく吠える飼い犬がいて、
角を曲がったあたりに、
僕の売ってしまったミニクーパーが停まっていて、
塀際のゴミ捨て場に着ている安物のスーツなんか脱ぎ捨て、
颯爽と乗り込み、
遠い青い空の下へ向かいエンジンをふかす、
なんて空想
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