砂と雫/邦秋
 
僕が空白ならば時間は通り過ぎる
首元を擦り抜ける絹の滑らかさで

 例えば陽の光が円を描いた日の
 夜空に煌めいた美しい光も

 瞬きの間も世界は動く
 次の季節の前に今を残して
 風で消えない足跡を刻み
 それぞれが憶えている景色を愛して

 僕に降る砂を零さないように両掌重ねて受け止めていたい
 幸せに何かを失う前から気づいていられるよう
 砂時計よりも、もっと特別な一粒を積み上げる
 そしていつか現れる
 この「僕だけに見える砂丘」は虹色に染められて

 例えば一つだけの傘に入るために
 あなたと近づけた その偶然の雨も

 歩調を合わせ前を見て進む
 水の中で舞う二人の呼吸のよう
 細かな霧が拡げる記憶も
 波紋の繋がり方で輪を描くよ

 声が聞こえてる 姿が見えない
 その音を雫にして残していたい
 月並みの言葉に潤いを与える波に浮かんでたい
 窓の朝露も、その涙も、一粒を大事に集め
 溢れ出せば広がる海
 日常という優しい水面に触れ続けたい
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