車椅子/
春日線香
数ヶ月前から歩道橋の上に車椅子が放置されている。まるで車椅子だけ残して誰かがそこから飛び降りたようでもあるが、幸いなことにそんな話はないようだ。車椅子は見るごとに位置を変え、ある日は歩道橋の中心に、またある日は極端に端に寄ってほとんど階段から落ちそうにもなっている。むしろ落ちてしまえばいいと誰もが思っているがなかなかそうはならず、陽の光を浴びて順調に錆びつき、時々は蝶も留まっていく。
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