私のいない世界に/こたきひろし
 
私のいない世界に降るのは雨
知らない誰かの内面の密林は雨季

私のいない世界に吹くのは前代未聞の暴風
知らない誰かの家も人も空に飛ぶされる

私のいない世界に
私がいる訳がない

私のいない世界は
氷河期
時間も凍りついてる

ちぎれた耳
閉ざされた口
私の物である筈はない
私は何処にも存在しないのだから

私のいる世界
貴女にむやみやたらに惹かれてしまうけれど
その理由は不明
恋愛感情なんてそんなものでしょう

一目惚れがずっと続いて
卑猥な妄想にまで行き着いてしまった

貴女の世界に私は存在しないのだから
その乳房やお尻に
指一本サワレヤシナイ

宇宙の果てまでも
埋まらない距離感
縮まらない時間

こんな詩をスマホに打ち込んでいる最中
最愛の妻は
何も知らないで
同じベッドに熟睡している

私はなんて不実な配偶者なんだ

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