蝉時雨/本田憲嵩
 
友よ、
夏の朝は蝉の羽に描かれた透明な街路図
すべては透明に満ち足りている
夏の灼熱の陽光は
まるで新鮮な水かなにかのように拡がってゆく
辺りの建物の窓や街路樹の緑 色濃い花々に
輝きと潤いをもたらしている
友よ、
あの朝の純粋な回路に今ふたたびに接続を――二人だけで歩いた
まだ真新しかった
この透明な街路に
けれども青春の夏は蝉時雨とその寿命
失われながらにして未だ残っているもの
透明な水のように新鮮だった街路に
今ではもうおぼろげにしか繋がらない
(まるで君そのもののように)


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