空き地/渡辺八畳@祝儀敷
 
家一軒だけが消えた場所は
真四角く切り取られたかのようで
三方は静かな住居に囲まれている
そしてさらに、後ろは山脈
この沈黙は三方どの面も硬直しているからだ
街灯は影を作れども
この場所にだけは屈折して入ろうとしない
残された一方で面した道路さえも
飛び越えていくかのように側を通過するだけだ

ひと気は忽然と消えて
地面が露わになったその場所は
掘れば化石が出てくるけれど
やはり蟻さえも入ってこない
月明かりの無い夜に
サンダル履きで忍び込んでみた
場所の中央から少し外れた一帯だけ
土が黒く湿っていて
脈打ち蠢いている
手ですくってみるが
ただの土
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