やわらかいもの/ただのみきや
つも同じ場所の臭いを嗅ぎ臭いを付けるように
そうせずにはいられない
安らぐわけではないが
なにかが摩耗して薄れるまで
頭をいくら武装しても
心はそのまま
言葉に善も悪もないが
渡す手
受け取る手
ふれる心はやわらかい
自分のことを言われていると思う人がいたなら
――その通り
だが当てつけではない
わたしもそんな一人だから
現れ方に個人差があるだけで
人は皆そのようなものだと
少なくとも わたしは 思っている
そして それでいいと
それを知ってさえいれば
心は石にも鉄にも化けるが
所詮はやわらかい
自分のものすらままならない
とてもやわらかいものなのだと
《やわらかいもの:2018年7月4日》
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